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Hazel Crossing

その時々気になったものを紹介したり、翻訳したりするブログ。 無断転載禁止です。

MILCK が『Quiet』の歌詞の意味を解説 Allureインタビュー記事和訳

ツイッターで見かけたMILCKさんの『QUIET』という歌を聴いてからかなり感銘を受けて、「歌詞を訳そう、訳せねば!!」って衝動に駆られてすっかりファンになった私ですが、実際に訳そうとすると、色々表現で迷ったり、「この解釈で大丈夫だろうか?」と悩んだりしておりました…

ですがまさにその時に、何とMILCKさん自身による歌詞解説が!!!

米雑誌『ALLURE』のウェブ版のインタビューでMILCKさんが歌詞に込めた想いとその意味について丁寧に答えてくださっているので、今日はその記事をご紹介したいと思います!

前回投稿した『Quiet』の歌詞和訳はこちら:
MILCK 『Quiet』 歌詞和訳 - Hazel Crossing

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「歌手MILCKがウィーメンズマーチのバイラルアンセムの深い意味を共有」
By CHANTEL MOREL  @CHANTELMOREL  2017年1月28日
元記事:http://www.allure.com/story/milck-womens-march-anthem
和訳:Hazel Crossing @hazel_crossing

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1月21日、女性の権利を訴えるマーチのために何十万人がワシントンに集まった時、ミュージシャンのコニー・リム(歌手名MILCK)が他に26人の女性と一緒に声を武器にし、立ち上がった。フラッシュモブ形式で行った歌のパフォーマンスは瞬く間に世界中に聴かれる(そして感じられる)ことになる。私たちは最近リムさんと一緒にお話する機会ができ、Allureの独占インタビューのために彼女が勇敢にも歌詞の意味を解説してくださった。
他の詩と同様、この解放的な歌の歌詞は単語一つ一つにより大きな意味と意図が込められている。

MILCKはDV(ドメスティックバイオレンス)、うつ病、と拒食症の生存者。彼女が自分の話を打ち明けられるようなるまでに11年かかった。すべてはロスのオープンマイクで始まった。オープンマイクの会場は親密な空間で、多様性を受け入れてくれる姿勢のある観客が多かった。MILCKが安心できる「安全空間」だった。その瞬間から、彼女は自分の音楽的才能を共有する自由を得た。

何年か後、ロス出身の彼女は4時間をかけてプロデューサーのAdrianne Gonzalezと一緒にあとにウィーメンズマーチの非公式なアンセムとなる歌、『Quiet』を作曲した。(後に歌のミュージックビデオも発表。)
「一人で曲を発表したので、少しは「ダビデゴリアテ」みたいな気分だったけど、この歌は絶対にシェアすべきだと強く感じたので」とMILCKがAllureに語る。
ワシントンDCでウィーメンズマーチが開催されると聞いた時、彼女はワシントンDCとロスエリアで活動する合唱団のメンバーを誘ってマーチで一緒に歌うことを決めた。

この短時間にこれほど多くの人に自分の歌が届く何てことを、彼女は夢にも思わなかった。マーチで彼女のパフォーマンスを見た通りすがりの他人が動画をFacebookに投稿し、今ではその動画の視聴数が1400万回にも上がっている。それ以来、世界中から『Quiet』を歌わせて欲しいという連絡が様々の合唱団からMILCKの元に殺到しているそうだ。

この勢いを保つために、MILCKは「#ICantKeepQuiet」と名づけた世界的な運動を始めようとしている。彼女の計画の一部は「I Can’t Keep Quietデー」を作ることだ。沢山の女性に『Quiet』を歌ったり、自分の経験や想いを話したりしているところを動画に撮り、動画を投稿してもらう日にする計画だ。(#ICantKeepQuiet運動に関する詳細な情報が分かり次第、またAllureからお知らせします。)
では(運動の詳細が分かるまで)とりあえず、MILCKの歌詞の詳しい解説はこの下でご覧いただけます。
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「Put on your face」(化粧をしなさい)※直訳:顔を付ける=化粧をする
前にこれについて姉とよく冗談を言っていた。「よし!顔をつけなきゃ」(化粧をしなきゃ)って。
この歌詞は最近よく考えたりするよ。メイクが悪いとか恥だとか、そういう意味だと勘違いされたくないので。メイクをする行為のより深い意味だ。例えば、誰かが自分に露骨なセクハラ発言をしたら、前はただ笑い流していたよ。それが私にとって「顔をつける」ことだった。分かるかな?そのような「ハッピーフェイス」をするということ。

「Know your place」(立場をわきまえろ)
移民の家庭で中国系アメリカ人の娘として育った中で、女性より男性の方が大事だという概念があって、私がずっと「立場をわきまえろ」と言われて育ってきた。
例えば、私が小さい時、中国の親戚から聞いたことがあったのだけれど、小さめな口と大きな瞳のある女性がより魅力的だと、何故なら小さめな口の女性は口数も少なく、周りをよく観察するからと。
そしてこれがまさに「Shut up and smile」(黙って頬んでろ)につながっている。

「Shut up and smile」(黙って頬んでいろ)
この歌詞は、気まずい状況で自分をどう守れば良いのかが分からなかった時を指している。以前、そういう時はただ笑って済ましているだけだった。あと前は本当によく泣いていた。家族の中では私が一番感情的。私がよく泣いていたのだけれど、伝統的な中国文化はそういうのにはあまり寛容ではないから、父がそのような感情への対処法を理解する能力を持ち合わせていなかった。なので、彼はいつも「泣くな泣くな、ハッピーでいて」と言っていた。でもそれって、すごく息苦しいことだよね、特にただ泣いていたいだけの時は。誰もそういう時はあると思う。

「Don’t spread your legs」(足を広げるな)
若い時は(女の子らしくない)トムボーイで、いつも座る時に母に「足を閉じなさい」と言われた。そう言われることが、私にpussy(訳注:プッシー=女性器を指すスラング/まんこ)がなんだか悪いもので、隠さなければいけないものなのかと思わせた。「足を絶対に広げるな」という女性が課せられている任務みたいなものは、(単純に見えて)実は様々なものが込められている、私たちが弱くて隙だらけって感覚を与えるから。
でも同時に母はいつも「あなたはそこを守らなければ」とも言っていた。なので、とても若い時から性暴力(の脅威)を意識させられた。

「But no one knows me, no one ever will」(誰も私のことを知らない、今後も誰も知ることはないだろう
昔、大人になったら何になりたい?と聞かれた時、いつもいつも頭の中で小さな声が「歌手だ!」と答えていた。でも将来の夢は中国系アメリカ人の移民らしく、医者とか弁護士でなければならないと教え込まれていた。それで、自分の声を静めて、本能を疑うことを学習してしまった。今でもそれが私にとって一つの課題になっている。

「If I don’t say something, if I just lie still」(何も言わなかったら、じっと横になっていたら
今までこのことをこんなに詳しく話したことはないし、公に言うのも初めてが、私が14歳の時、暴力的な彼氏がいた。
彼は私の部屋に無理やり侵入してきて、親にバレるようにでかい声で叫ぶぞ!と私を脅した、彼は何もかもを私のせいにしようとしたから。
私の中で何かがシフトしてしまったのを覚えている。すべてを愛する純粋でナイーブな女性から、ただ安全でいようとするために彼の言うことを何でもする人へと変わってしまった。彼が酔っ払ってものを投げたりしたある瞬間を今でも鮮明に覚えている。その時私は自分に起きていることをされるがままにじっと横になっているような感覚だった。
(このことを言うのは)とても難しいが、共有したかった。私がそうすることで他の人を力づけることができ、私たちが今まで持ち続けた恥のようなものを癒し、今度はコミュニティのリーダーになるなど、自分たちをエンパワーすることができると思っているから。

「Would I be that monster, scare them all away」(あのモンスターになって、彼らを怖がらせて追い払ってしまうのか
とても若い時、周りから吸収した行動や振る舞いが潜在意識に保存されていく。なので、大人になってから何かのトラウマが身に降りかかるとその潜在意識が呼び起こされ、今まで見てきた(経験してきた)暴力的な行為を繰り返しかねない。DV(ドメスティックバイオレンス)の生存者として、一種のモンスターとその暴力者が自分の中に今でも潜んでいる時があると感じてしまう。でもそれ(その気持ち)を自分の中に閉じ込める義務は私にはない。だからこの歌詞は「I can’t keep quiet」につながる。

「Cuz no one knows me no one ever will」(だって誰も私のことを知らない、今後も誰も知ることはないだろう
あまりにも長く黙り続けた時、その時点でもう時間自体はそんなに残っていない。だからそこからは本題に戻る(訳注:本題=歌詞の中での本題)、だって本当の私を誰もが知らなければ、今後も知る機会はないだろう。

「If I don’t say something, take that dry blue pill」(何も言わなかったら、あの乾いた青い錠剤を飲んだら
「dry blue pill」(乾いた青い錠剤)これは元になっているものが多い。まず一つめ、私は『マトリックス』の大ファンなんだ、実は。私にとって、『マトリックス』は一種の導いてくれる存在な気がする。高校生の時に見て、「あ!あの赤い錠剤飲んでみたい!」と思った。
アーティストでいることは、赤い錠剤を飲んで、社会に立ち向かうことだと思う。
他には(避妊用の)ピルのことも考えたね。いや、賛成とか反対ではないよ、ピルというのは必要なものだと思うから。でもそれを飲むたび、何だかちょっとした恥じらいとか罪悪感みたいなのが結び付けられているのはあるよね?
最後は抗うつ薬だね。薬のこと自体を問題にしているわけではないよ。本当の自分というものを無感覚にしてしまうものの例えで、その青い錠剤は私たちを傷付け、魂を殺してしまうような情報や意見を受け入れさせてしまうものを象徴している。
※【メモ】『マトリックス』の劇中では赤い錠剤を飲むと覚醒し、「本当の世界」で生きることができるが、青い錠剤を飲むと何もかも忘れて機械による仮想現実の「嘘の世界」に戻ってそのまま夢を見続ける…という設定だったはずです。(観ていない人はそんないないはずだと思いますが一応念のため)

「One Woman riot」(ワンウーマンだけの暴動)
これは自分にとってすごく大事な歌詞だった。自分のために立ち上がることや自分の違う一面を見せることを練習していたし、歌詞とは別にそのような(一人で暴動を起こすような)瞬間を覚えていたから。

(※以下説明されているブリッジの部分は「Let it out Let it out Let it out now、There’ll be someone who understands」(吐き出して、吐き出して、もう吐き出して、誰か分かってくれる人はいるはず)などの部分を指している)
歌のブリッジの部分は、聴いた人が自分たちの話もシェアしたくなるように、すごくカタルシスになるようにしたかった。実際に、私たちの期待と予想を遥かに超えるレベルで今それが起きていると思う。
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このAllureの記事を読んで、歌詞に込められた想いだけでなく、MILCKさんがこの曲を作るに至るまでの過程が少し見えてきたではないでしょうか。

『Quiet』のこの歌詞は一回聴いただけでも強く共感する人が多いと思います。表面的な部分だけ見ると、それほど細かい内容にも見えないが、このインタビューで見られるように、MILCKさんが自分に今まであった様々なことを思い出しながら色んな意味を込めて作曲しています。
そしてMILCKさんが歌詞の細部に自分の経験してきたことや痛みを込めていると同じように、聴く人もまた自分の経験してきた様々なことを思い浮かべながらこの歌詞に共感していると思います。

 

Quiet

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